✟ History ✟

■Autumn Breeze(2004)
 今からおよそ10年前、このシリーズの最初の作品が誕生しました。 当時は学生だった故に資金難で、預金をはたいて購入したmidi音源(SC-88pro、SD-80)を、 Editorを使ってカスタマイズしながら音楽作りを行っていました。 世間ではTranceが大ブームとなり、同胞達が高級なシンセを使い、 太く力強いトランスリードを作り出していた中で、どうしても劣等感を感じずにはいられませんでした。 そんなもどかしい状況下、SD-80から遂にトランスリードを作り出す事に成功したのが、本作が生まれるきっかけでした。 この音は、今でも頻繁に使用しています。最近の作品では「SOLROS -Eternal Memory-」に収録したATRIAにも使われており、 その時の苦難が、今でもしっかりと活き続けています。

 Autumn Breezeは、その頃にやりたかった事を全てつぎ込んだ作品でした。時期が晩秋であった事から、木枯らしを題材にし、 木の葉が舞い散る表現を模したピアノやフルートのフレーズ、哀愁漂うメロディを盛り込み、 本来のエピックトランスとはかけ離れた独特な作風でしたが、とても自分らしい作品に仕上がりました。

 ところでこの少女....ルーナという娘ですが、当時は名前どころか、顔さえも隠れていました。 背中越しの哀しさを表現する為でしたが、今考えれば勿体ない事をしたなと思っています。

■Maple Town Memories(2005)
 Autumn Breezeから翌年の12月。Maple Town Memoriesをリリースしました。 この作品は、同年8月に発表したFUTURE JAZZの実験作品「Night Eyes」の成果を経て生まれました。


 .....よく聴いて頂くと、Lofiドラム等、私の歴代作品ですっかりお馴染みの音が聞こえてくると思います。 当時、私はジャズテイストに夢中になっていた頃で、Maple Town Memoriesはその真っ只中で作られ、 Autumn Breezeの続編所以の哀愁漂うメロディ、そしてジャズテイストが融合した作品となりました。 他にもメトロノーム音を盛り込んだり、ピアノの上昇グリッサンドを加える等のアイデアも多く、 幻想的な世界観を感じさせつつも、個性的な作品に仕上がりました。

 本作でルーナは、初めて表情がお披露目されましたが、残念な事にまだ目を瞑っていました。 我々音楽家は、目を瞑って自身の演奏の世界に浸る事が珍しい事ではありません。 故に、アルバムジャケットには、目を瞑った演奏家の写真、或はキャラクターのイラストが描かれる事が多いと言えます。 しかし瞳には、重要な表現が多く含まれます。私がその事に気が付くのは、実を言うとつい最近の事でした。 作品の雰囲気を重視した故の演出でしたが、そうした経緯もあり、ずっとその存在感が薄く、時に注視されなかった事もありました。

■Autumn Breeze ~Forget Regret~ (2013)
 2011年に第2世代Autumn Breezeを別名義でリリースしました。 その頃から資金にも余裕が生まれ、DTM環境には高価なステージピアノ、ハードシンセ、豊富なサンプリング・ライブラリを取り揃え、 未だかつて無い程、強力な制作環境の中でリメイクする事になりました。

 そして2年後、Rigel Theatreという新たなレーベルを立ち上げ、第3世代Autumn BreezeをSound Cloudにてリリースしました。 プロジェクトコード「Autumn Breeze ver3.0」として制作された本作では、旧版よりドラム系パート、フルートの音色を大幅に見直し、 全体的な音圧を向上。そして何より、新しい構成が加わった点が特徴でした。 旧来のオープニングフレーズには、どうしても全体構成より浮いていた印象がありました。既存コーダでの回収では、やはり物足りない。どこかで同じフレーズをもう一度登場させる必要がありました。 そこで、2週目のフレーズをエントランスとして複線回収を果たし、元に戻る構成が出来上がりました。 全体の雰囲気が、少し昔のスウェディッシュ・ハウスのような曲になり、本作にとって最も理想的な仕上がりになったと言えます。

 ルーナがその名前を持ち、表情がしっかりお披露目されたのは本作をリリースしてからの事でした。 それと時を同じくして、シリーズ作品のアルバム化の企画が生まれました。その企画は、1年後にいよいよ始動する事になります。

■LUNA(2014)
 そして2014年の秋、Autumn Breezeから始まったルーナという少女を描いたシリーズは、10周年の節目を迎えます。

 多くの苦難を共にしてきた本シリーズへの愛着と、そして作品へのご支持を頂いた皆様への感謝を込めて、 本アルバム「LUNA -Maple Town Memories-」をリリースします。

 長きにわたり歩んできたシリーズ作品の思い出と、そして新たに進化した姿。その双方を垣間見る事が出来ると思います。 シリーズ作品を支持頂いた皆様は勿論、初めてRigel Theatre作品に触れる皆様にも是非、耳を傾けて頂きたいと切に願っております。


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